事業計画書は、あなたがビジネスで収益を得て持続的に経営を行うための計画をまとめたものです。事業計画書は3つの要素から成り立っています。「仕組み」「お金」「行動」が複雑に絡み合い、全ての必要な要素が揃うことでビジネスはまわり、大きく発展します。本編では、その「仕組み」を決め方を解説します。

もくじ
あなたのビジネスの目標・目的はなんですか?
事業計画書の「はじまり」は、あなたがビジネスで目指す姿を示すところから始まります。ビジネスにおいてあなたが「どのような商売をしたいか」、ということの前に、「どのような想いを持って商売をしたいか」という軸を決める必要があります。そのために、まずはあなたの内にある目指すべき姿=企業理念を定めます。そこを軸に事業領域(ドメイン)を決定し、ビジネスモデルへ落とし込みをします。
ポイントは、どれもただの思いつきで行ってはいけません。市場には顧客だったり、競合、取引先といった「相手」がいます。相手を知り論理的に参入する市場を決め、手法を選ばなければなりません。あなたの“やりたいこと”を仕組みをつくるためには、下記の手順で行っていきます。

企業理念・ビジョン・ミッションの設定
まずは、あなたのビジネスに対する“想い”を企業理念とビジョンに落とし込んでいきましょう。企業理念・ビジョンは、あなたの事業計画の全体像を端的に示すものです。
企業理念・ビジョン・ミッションを掲げることで、周りに価値観や目指す方向性を示し、そしてあなた自身がその芯を持ち続けるためのツールになります。ビジネスはあなた一人で進めるものではありません。顧客や取引先、株主、そして一緒に働く仲間がいます。その関係者にあなたの軸を示し「ついてきてもらう」ために掲げます。
企業理念やビジョン、そしてそれに続く企業戦略(事業領域や販売戦略、ビジネスモデル)は、一貫した軸を持もたせるものになります。

企業理念とは
企業理念 ビジネスをのような価値観を持って取り組むのか、また、それに取組むことの意義や担う使命は何か
企業理念はあなたの想いの詰まったものです。まずは、あなたの考えを書き出しましょう。この時にきれいな文章に必要はありません。かっこいい言い回しは他社を真似ればよいので、とにかく書き出しましょう。
また、あなたのビジネスで顧客や社会が得られる価値を挙げてみましょう。あなたのビジネスによって顧客や社会はどのような課題を解決できますか?
たくさんの“想い”が挙がったら、その中で10年後を想像できるものを選びブラッシュアップしましょう。

(行政書士)
企業理念は、時間かけながらじっくり決めましょう〜
ビジョン・ミッションとは
ビジョン 事業が目指す目標や、将来像
ミッション 事業を通じて社会に提供したい価値。日々遂行している使命。
ビジョンは、その事業の将来性や成長可能性を示すものになります。具体的には、社会にどのように受け入れら広まっているのか、5年後、7年後、10年後の売上等の経営指標がどうなっているかを意識しながらまとめます。
ビジョンの例
指数目標 売上高、店舗数、シェア、会員数、客単価、顧客満足度 等
改善目標 コスト削減、ロス率削減、在庫率削減、残業時間削減 等
人材目標 生産性、1人当たりの売上高 等
事業領域(ドメイン)を決める

(行政書士)
企業理念やビジョンを実現させるフィールドを選んでいきます。ここからは市場を分析して行きますよ〜
事業領域(ドメイン)とは、あなたが展開しようとしている事業の範囲を示す概念です。基本理念やビジョンといった企業としての目指す姿(大元の部分)と、環境分析を踏まえてあなたが取るべき手段を合わせて設定します。

環境分析では外部環境と内部環境の両側面から分析し、統合させて自社が戦うべきフィールドや手法を導き出して行きます。外部分析ではPEST分析、5Force分析、3C分析、内部分析ではSWOT分析のフレームワークから導き出してみましょう。
外部分析 〜PEST分析、5Force分析、3C分析〜
PEST分析
PEST分析は、起業を取り巻く外部環境をマクロの視点で分析するフレームワークです。外部環境の中でも、「政治(Politics)」「経済(Economy)」「社会(Society)」「技術(Technology)」の側面から、事業活動に与える要素を分析します。
分析のポイントは自社にとって影響力の高い要因を洗い出し、機会と脅威を明確にすることです。

出典:『経営戦略の基本』経営戦略研究所 p39(一部省略)

(行政書士)
PEST分析は、自社ではコントロールのしようがない項目を挙げて行きます。影響力が高そうな項目を挙げてみましょう。
5Force分析
5Force分析は業界を分析する代表定期な手法で、企業戦略論で有名なマイケル・ポーター教授が提唱しました。企業の収益は、その企業を取り囲む様々な関係者によって影響を受けます。企業に影響を与えうる存在を、「業界内の競合」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「供給者の交渉力」「顧客の交渉力」の5つから捉え、自社にとってどのように影響を与えるのかを分析をします。

出典:『経営戦略の基本』経営戦略研究所 p40

(行政書士)
5Force分析では、参入しようとしている業界の魅力度を分析するのに用いることもあります。
3C分析
3C分析は、あなたのビジネスの強みと弱みから、市場との差を把握し、成功要因(=勝ちパターン)に対してどのような手段が有効かを見出すための分析ツールです。
まずは、顧客を特定しその顧客が求めているニーズや購買要因(=マーケット)を分析します。次にそのマーケットの競合を分析します。その競合が成功している要因から勝ちパターン(=KFS)を見つけましょう。
最後に、自社であればどのようにその勝ちパターンを実践できるか、自分自身を分析します。強みや弱みからどのような手法であれば、あなたの魅力を出せるのかを見出します。

出典:『経営戦略の基本』経営戦略研究所 p50(一部省略)

(行政書士)
後に販売戦略を立てる際にも競合については分析します。ここでしっかりチェックしておきましょう。
内部分析 〜SWOT分析〜
SWOTとは、「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threats)」の頭文字をとったものです。事業を取り巻く環境を内部環境の強み・弱み、外部環境の機会・脅威の側面から分析します。SWOT分析をする際にはただ単語を羅列させるのはなく、文章で挙げていきましょう。
そして、「強み」「弱み」「機会」「脅威」が整理できたら、次は打ち手の方向性を具体化していきます。それぞれの内部環境と外部環境の要素を組み合わせて検討をしていきます。


事業領域(ドメイン)の決定
外部環境分析、内部環境分析から導き出すことは、ターゲットにするマーケット(=顧客のニーズや購買要因)を決めて、そこに対してあなたの魅力が最大限に活かせる打ち手を見出すことです。
そして、「どこで」「どのように」「価値」を提供するのかを決めることが、事業領域の決定につながります。


(行政書士)
初めに掲げた「企業理念」の軸は一貫させましょう
ビジネスモデルに落とし込む
事業領域(=ドメイン)が決まったら、具体的な販売戦略を構築しビジネスモデルに落とし込んでいきます。
競合を一歩深く分析する
3C分析で競合については調査していますが、さらにそこから一歩進んで分析をして行きます。実際に顧客にどのようにものやサービスを提供しているのかを、マーケティングの4Pの切り口で分析をします。
製品(Product) 何を売っているのか。売りのポイントや品揃え・メニュー
価格(Price) 定価や特売価格、取引条件、利益率
流通(Place) どこで売っているのか。証券や流通ルート、店舗について
販促(Promotion) 広告宣伝、販売促進活動
表などの一覧でまとめると、その企業の売りとしているポイントが見えてきます。また、あなたからみてイマイチな面も見えてくるはずです。競合の特徴を客観的に捉えて行きましょう。
自分のウリを考える 〜差別化戦略の考え方〜〜
競合について分析をしたら、自社が競合に勝てるポイント(差別化ポイント)を探っていきます。事業領域(ドメイン)を決める際にも、SWOT分析を行ってある程度導き出していると思います。先ほど行った4P分析と併せて、競合に無くて自分にできるものビジネスのウリを考えます。

出典:『経営戦略の基本』経営戦略研究所 p63(一部省略)
自分の魅力を最大限に活かせそうなポイントを見出せたら、具体的に4Pのフレームワークを利用しながら販売戦略を構築して行きましょう。
製品(Product) 顧客視点、コスト、競合比較の視点から製品のラインナップを決める。ラインナップは「幅」と「奥行き」の視点で決めると良いです。この視点があると、競合との差別化もしやすいです。
価格(Price) 市場の適正価格や、顧客がその商品群に出す価格基準、そして利益をいくら取るかといった視点で決めましょう。商品イメージ(ブランド)に見合った価格せっておをすることも大事です。
流通(Place) 実店舗やインターネット、卸業者や小売業に卸すといったことを決めます。流通チャネルはコストにも関わってきます。リスクヘッジのために、複数のチャネルを検討してみてください。
販促(Promotion) 広告宣伝費、販売促進、広報PR 等 目的や顧客、商圏から適切な販促活動を選択しましょう。

(行政書士)
4Pを考える時のポイントとしては、一貫性(=ブランドイメージ)を持たせることです。
ビジネスモデルに落とし込む
いよいよ、ビジネスモデルにまとめてみましょう。ビジネスモデル・キャンパスや図表などの視覚的にまとめてもよいです。ビジネスの流れがひと目でわかるようにまとめます。
ビジネスモデル・キャンパスでは、9つの要素からビジネス全体像を可視化しています。事業を成り立たせるうえで必要な要素が漏れることなく整理することができます。右側が顧客との関係を示しています。顧客に対してどうやって価値を提供し、どのように売上げを回収するかを示します。一方の左側は自社や自社の取引先との関係を示しています。


(行政書士)
あなたのビジネスがどのようにして利益がでる仕組みになっているかをまとめてみましょう
まとめ
以上、ビジネスで“やりたいこと”を実現させる仕組みをつくる際の思考法について解説いたしました。事業計画書における「仕組み」は「基本理念・ビジョン」・「事業領域」・「ビジネスモデル」によって成り立っています。これらは、あなたの想いだけでは成り立たずしっかりとした環境分析を踏まえて論理的に構築していく必要があります。あなたなのビジネスを成功させるためにも、しっかり考えて行きましょう。
(行政書士)
「長い」と思われるかもしれませんが、とても大事なことなので頑張りましょう!