事業計画書の1つのポイントである「仕組み」の部分である「ビジネスモデル」の作り方について解説したいと思います。本編では「勝てるビジネスモデル」を意識して、策定までの思考法について徹底解説します。
もくじ
ビジネスモデルを作るまでのフロー
新しいビジネスを始めるとき、まずは主軸となる「企業理念」を決めます。これは最も大事にしたい価値観を言葉にしたものです。そのビジネスをどのような価値観を持って取り組むのか、また、それに取組むことの意義や担う使命について固めます。
次に、企業理念を主軸に「事業領域」を決めます。企業理念で掲げた内容を、価値として実現させる場が事業領域になります。事業領域は外部環境や内部環境を分析をし、あなたの魅力が最大限に活かせられるフィールドと手法を選んでいきます。
事業領域が決まったら、さらに競合分析を行い差別化ポイントを見つけます。また、販売戦略を具体的に決め「ビジネスモデル」にまとめます。

競合について分析する
3C分析おさらい
ドメインを決定する際に、3C分析は一度行っていると思います。しっかりできている場合には、見直してみましょう。
3C分析では、まずは顧客のニーズや購買要因について調べます。漠然とした顧客層ではなく、どのようなニーズや解決したい悩みがあって、それが購買行動につながっているのかを特定する必要があります。顧客を特定しなければ競合が見えてこないはずです。マーケット(ニーズや購買要因)の本質が何なのかをしっかり見極めましょう。
次に、そのマーケットの競合を分析します。目立っている競合は裏を返せば“成功している”企業です。競合の成功要因(=勝ちパターン=KFS)を見つけましょう。

出典:『経営戦略の基本』経営戦略研究所 p50(一部省略)
マーケティングの4Pから徹底リサーチ
競合の成功要因(=勝ちパターン=KFS)を導き出すために、分析ツールの一つとしてマーケティング戦略の基本である「4つのP」の切り口から分析する方法をご紹介します。
4P分析とは、「製品(Product)」「価格(Price)」「流通(Place)」「販促(Promotion)」の切り口から分析する手法です。
製品(Product) 何を売っているのか。売りのポイントや品揃え・メニュー
価格(Price) 定価や特売価格、取引条件、利益率
流通(Place) どこで売っているのか。証券や流通ルート、店舗について
販促(Promotion) 広告宣伝、販売促進活動
業界によっては、上記の切り口に加えて見るべき視点も変わってくると思います。表などでまとめながら特徴を掴んでいきましょう。
自分のウリを考える 〜差別化戦略の考え方〜
競合について分析をしたら、自社が競合に勝てるポイント(差別化ポイント)を探っていきます。事業領域(ドメイン)を決める際にも、SWOT分析を行ってある程度導き出していると思います。先ほど行った4P分析と併せて、競合に無くて自分にできるものビジネスのウリを考えます。

(行政書士)
ここでの「差別化」とは、マイケル・ポーターが『競争の戦略』で提唱した基本戦略の意ではなく、あくまで競合との差別化ポイントのことを指します。

出典:『経営戦略の基本』経営戦略研究所 p63(一部省略)
強みを最大限に活かして差別化していくということは、その状況を持続的に実現するためにも必要なことです。模倣されにくいビジネスモデルにしていくためにも、ウリを確立させておきましょう。
販売戦略を決める

(行政書士)
具体的な商品の販売戦略をかためてみましょう!
ここまで、しっかりリサーチができていれば商品設計と販売戦略のアイディアは十分できているのではないでしょうか。ここで、再び4P分析の切り口からあなたの商品の販売戦略をかためてみましょう。
ここで重要なことは、4つのP(要素)に一貫性を持たせることです。

(行政書士)
ブランド重視の場合は、安ければいいというわけではないですからね。
製品(Product) 顧客視点、コスト、競合比較の視点から製品のラインナップを決める。ラインナップは「幅」と「奥行き」の視点で決めると良いです。この視点があると、競合との差別化もしやすいです。
価格(Price) 市場の適正価格や、顧客がその商品群に出す価格基準、そして利益をいくら取るかといった視点で決めましょう。商品イメージ(ブランド)に見合った価格せっておをすることも大事です。
流通(Place) 実店舗やインターネット、卸業者や小売業に卸すといったことを決めます。流通チャネルはコストにも関わってきます。リスクヘッジのために、複数のチャネルを検討してみてください。
販促(Promotion) 広告宣伝費、販売促進、広報PR 等 目的や顧客、商圏から適切な販促活動を選択しましょう。
ビジネスモデルに落とし込む

(行政書士)
いよいよ、ビジネスモデルにまとめてみましょう。ビジネスモデル・キャンパスや図表などの視覚的にまとめてもよいでしょう。ビジネスの流れがひと目でわかるようにまとめます。
<ビジネスモデル・キャンパス>
9つの要素から、ビジネス全体像を可視化しています。

ビジネスモデル・キャンパスでは、事業を成り立たせるうえで必要な要素が漏れることなく整理することができます。右側が顧客との関係を示しています。顧客に対してどうやって価値を提供し、どのように売上げを回収するかを示します。一方の左側は自社や自社の取引先との関係を示しています。どのようなパートナーの協力を得て、どのような経営資源を使い、どのように価値を生み出すかについてを示します。
つまり、あなたのビジネスがどのようにして利益がでる仕組みになっているかをまとめます。加えて、頭の中で事業を回すイメージができれば、ビジネスモデルは完成です。
まとめ
以上、ビジネスモデル策定までの思考法について解説しました。スタートアップ向けのビジネス本には、もっと他に多くのフレームワークを使用したものもあります。業種によって選択すべきフレームワークも変わってきますが、まずはベースとなる考え方を選んでみました。ビジネスモデルは事業計画書における「仕組み」の中心部分になります。じっくり環境分析を踏まえて策定していきましょう。
(行政書士)
スタートアップの場合、商品やサービスの販売戦略自体が企業戦略に近くなる傾向が多いため、それを意識したフローにしました。