事業計画書の大事な構成要素の一つが収支計画になります。そして、収支計画では収支計画書(損益シミュレーション)と、資金繰り表を作成します。収支計画書でその事業がきちんと利益を継続的に出すことができるのかを示し、資金繰り計算書ではその事業の現金の収支の流れを示すものです。本編では、これらに出てくる項目について解説致します。
収支計画の構成要素とは
事業計画において重要なことは、利益が出る事業体質であること、その事業を長く続けられることです。事業計画書は、「仕組み」「お金」「行動」の3要素が絡み合ってできるものです。素晴らしい仕組みや行動があっても、それを動かす資本がガタガタでは持続的な経営はできません。

収支計画は、事業計画書の中でも「お金」の部分の計画を立てることになります。こう聞くと漠然としているように感じるかもしれませんが、具体的には「収支計画書」と「資金繰り表」を作成することになります。ただし、ただ漫然と数字を入れたのではダメです。根拠に基づきながら入力します。
収支計画書と資金繰り表については、インターネットで計算すれば様々なフォーマットがあります。ここでは、日本政策金融公庫のフォーマットを掲載します。(ダウンロードはこちらから)ご自身で使いやすいフォーマットを選んでください。
これらに出てくる項目「売上高」「売上原価」「経費(販売費及び一般管理費)」について、また資金繰りについて事項でご説明いたします。
収支計画書の作り方
収益性の検討

(行政書士)
まずは、収支計画書(損益シミュレーション)を作成しましょう。
Step1. 売上原価の計算の仕方
まずは、商品の売上原価を計算します。売上原価は、製品1個当たりを計算します。また、生産や仕入ベースではなく、実際に売上げた数量に対して計算します。
<計算式> 売上原価 = 原材料費・仕入れ費 + 労務費 + 経費
原材料費・仕入れ費 製品を作るための材料費、仕入れ費
労務費 製品を作るためにかかった人件費
経費 製品を作り、提供するためにかかる諸経費(例えば製造をする工場の維持費等)
上記の要領で売上高を算出したら、原価率を計算します。
<計算式> 原価率 = 売上原価 ÷ 販売価格 × 100%
事業計画書や損益計算書に落とし込む場合は、月間や年間の売上高に原価率をかけて、「売上原価」を把握をします。
Step2. 販売費・一般管理費を計算する
売上原価以外の費用は、全て販売費か一般管理費に含まれることになります。これらを計算します。
販売費 営業部門にかかる人件費や交通費等の経費、売上に影響をする広告宣伝費、商品の発送にかかる運賃 等
一般管理費 バックオフィス部門(総務、会計、人事等の管理部門)等の人件費や、本社の家賃や水道光熱費、消耗品日、駐車場代や税金 等
販売費・一般管理費は、損益計算書上で「営業利益」を算出するために必要な指標です。また、後に「変動費」・「固定費」の算出にも使用します。
Step3. 売上予測の立て方
売上高の予測は、目標となる数字となります。立てられる目標が実現可能な売上高であり、また利益が出る数値を設定しなければなりません。
目標としている売上に根拠を持たせるためには、公開されているデータを活用しましょう。
公開されているデータ
<日本政策金融公庫>
- 創業の手引き、創業のポイント集 https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/sougyou03.html
- 小企業の経営指標 https://www.jfc.go.jp/n/findings/sme_findings2.html
<J-NET21>
- 業種別スタートアップガイド https://j-net21.smrj.go.jp/startup/guide/index.html
<TKC全国会>
<中小企業庁>
<総務省統計局>
<厚生労働省>
<内閣府>
<経済産業省>
業種別 売上算出方法
売上は、要素ごとに細分化することで算出することで、より根拠を持たせながら計算することができます。算出方法については、日本政策金融公庫『創業の手引』で詳しく解説されています。
① 小売業・サービス業
<計算式> 1日あたりの顧客数 × 客単価 × 営業日数
<計算式> 1平米(または1坪)あたりの売上高 × 売場面積
② 飲食業、理・美容業などサービス業関係業種
<計算式> 客単価 × 席数 × 回転数 × 営業日数
③ 労働集約的な業種(自動車販売業、化粧品販売業、ビル清掃業など)
<計算式> 従業員1人当たりの売上高 × 従業員数
④ 製造業
<計算式> 製品単価 × 販売数量(または1社当たり購入量×販売先数)
⑤ 設備が直接売上に結びつき、設備単位あたりの生産能力が捉えやすい業種
<計算式> 設備の生産能力 × 設備数
計算をした後は必ず、予測し目標とした実績の収益性が確かなものかを様々な角度から検証してみましょう。
融資の検討

(行政書士)
次に資金繰り表を作成してみましょう!
Step4. 創業資金の計画を立てる
創業コストは、初期時の初期コスト(営業を始めるために要した資金)と営業後の発生する運転資金から成り立ちます。創業間もなくは、ビジネスモデルによっては売上が立ち、また入金があるまでに想像以上に時間を要する場合もあります。当然創業後しばらくは、売上も安定しないでしょう。そのため、業種にもよりますが3ヶ月〜6ヶ月の運転資金を準備しておく必要があります。この運転資金を甘くみがちですので、注意してください。
特に大きい金額の費用については、必ず見積もりをとるようにして正確に把握するようにしましょう。
<計算式> 創業コスト= 設立時の初期コスト + 運転資金(ランニングコスト)
設立時の初期コスト 物件取得費(敷金、礼金、保証金、仲介手数料、家賃1ヶ月分)、工事費(内装工事費、電気、電話、ネット工事費、看板製作費)、設備・備品費(机・椅子、PC・周辺機器、電話・FAX、レジ・陳列棚・什器、文房具・封筒・印鑑)、法人設立費(設立手数料、許認可取得手続き)、宣伝広告費(ホームページ制作料、名刺・チラシ・パンフレット、ウェブ広告)、初期仕入れ費・初期人件費、その他
運転資金 3ヶ月〜6ヶ月の運転資金(変動費+固定費)
<計算式> 運転資金 = 変動費(売上原価+販売費) + 固定費(会社を維持するのにかかるもの) + 固定でかかる販売費(営業マンの人件費等)
<設立時に必要な費用>※ 一例

創業コストが計算できたら、今予定している資金で足りるかを再確認してみましょう。

※参照 『創業計画書』日本政策金融公庫
もし自己資金で足りない場合には、資金調達を検討しましょう。資金調達の方法は主に5つです。
- 金融機関からの創業融資
- 行政(国)の補助金・助成金
- ファクタリング
- 縁故者への少人数私募集債発行
- 第三者からの増資
創業資金の場合、市区町村の斡旋や日本政策金融公庫の場合、無担保や比較的低金利で融資を受けられることもあります。ご自身の方法にあった内容を検討してみてください。
Step5. 資金繰り表をつくる
運転資金のところでも検討したように、実際の売上の入金と、支出の出金の時期を把握しておくことは、事業を運営する中で非常に重要です。その事業が資金ショートすることなくきちんと回せるかということを把握しておかなければなりません。
忘れてはならないのが、納税と融資等への返済計画です。こちらについても必ず資金繰り表及び、損益シミュレーションに落とし込むようにしてください。
まとめ
以上、収支計画の考え方および策定方法についてご説明いたしました。収支計画は「収支計画書(損益シミュレーション)」と「資金繰り計算書」から成り立ちます。ここをしっかり理解して作り込むことで、あなたのビジネスの実際の流れや動きのイメージが湧いてくるはずです。最近では、数字を打ち込むだけで自動計算してくれるサービスもありますが、面倒でも自分の手で作成するようにしてください。
(行政書士)
「数字のことはわからない」と思っているそこの社長さん!あなたは、ご自分のビジネスの領域内ではプロフェッショナルであることは間違いないです。でもだからといって、経営の数値もしっかり把握しましょう!