会社設立時の定款において「譲渡制限株式」について盛り込んだほうがよい、とはよく聞くけれども・・・そもそも「譲渡制限株式」って何?盛り込むとどのようなメリットがあるの?と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。譲渡制限株式とは、発行している株式の譲渡において会社の承認を必要にするといった制限をかけられる株式になります。これらについては、定款に定めなければ効力を発しないものになります。本編では譲渡制限株式について見てみましょう。
もくじ
会社設立時に定款において定める株式に関する内容ついて
絶対的記載事項と相対的記載事項
発起人は会社を設立する際に決めるべきことを決め、定款を作成します。株式会社の場合は、その定款内に「株式」について触れ、株式に関することを定めておく必要があります。定款には載せなければならないことが決まっており、これらについて決める必要があります。特に絶対的記載事項の項目は全て、定款に記載する必要があります。また相対的記載事項については、定款に定めがなくても定款自体の効力に影響はないものの、定めがない場合にはその効力が認められない事項になります。そのため、積極的に定めておいておいたほうがよい事項なります。
<株式に関する絶対的記載事項と相対的記載事項について>
絶対的記載事項 発行可能株式総数
相対的記載事項 株式の内容・種類株式の定め
“株式の内容・種類株式の定め”の具体的な内容
株式会社は定款で定めることにより、以下のことをできるようになります。
- 株式全部の内容として特別な事項を定めること
- 内容の異なる複数の種類の株式を発行すること
これらは、相対的記載事項のため定款に定めなければ効力を発しません。
①について、株式全部の内容として定めることができるものは、譲渡制限株式、取得請求権付株式、取得条項付株式の3つになります。②の種類株式には、優先株・劣後株、議決権制限株式、全部取得条項付株式、拒否権付株式、取締役・監査役の選任権付株式があります。
これだけは盛り込んでおきたい!「譲渡制限株式」に関する条項について
まず譲渡制限株式とは、譲渡による取得について会社の承認が必要な株式になります。これを定款において定めることができます。定款による株式の譲渡制限を設けた場合、取締役会設置会社では取締役会の承認を必要とし、それ以外の会社では株主総会の承認を必要とします。
また、株式譲渡制限会社にすれば、定款で取締役の任期を最長10年まで延ばすことができます。(通常の取締役の任期は原則2年です)

(行政書士)
株主は多くの権利を有することと、任期のメリットを考えると、特段の事情がなければスタートアップ企業は盛り込んでおくことをお勧めいたします。
また、株式は相続の対象となります。そのため、不慮の事故等予測していない事態のために相続等で株式が他人に渡った場合は、当会社に売り渡すよう請求できるようにしておくとよいでしょう。
以上から、定款のテンプレートは世の中多くあると思いますが、下記の2条項は盛り込んでおくとよいです。
(株式の譲渡制限)
第○条 当会社の株式は全て譲渡制限株式とし、当会社株式の譲渡による取得については、株主の承認を受けなければならない。
(株式の売り渡し請求)
第○条 当会社は、当会社の株式を相続そのほかの一般承継により取得したものに対し、当該株式を当会社に売り渡すよう請求することができる。
まとめ
株式の譲渡制限を定款で定めておくことで、会社の承認なしには株式を譲渡できなくなります。これはスタートアップ企業の身を守るだけではなく、取締役の人気を10年まで設定できるというメリットもあります。この条項については相対的記載事項であって絶対に定めなければならないものではありませんが、特段の事情がなければ定款に盛り込んでおかれることをお勧めいたします。
(行政書士)
会社設立時の定款には、この「譲渡制限株式」について盛り込まれるとよいでしょう。詳しく解説していきます。