創業融資を検討し始めると、「制度融資」と「日本政策金融公庫の融資」の2つの選択肢があります。創業期の企業や個人事業主の場合には、非常に利用しやすい資金調達方法です。この2つの選択肢には、メリット・デメリットがあり比較検討をして決めることが求められます。
もくじ
日本政策金融公庫の融資の特徴
日本政策金融公庫の創業融資にも種類がありますが、その中でも最も代表的な新創業融資制度についてご説明します。
日本政策金融公庫とは
日本政策金融公庫とは、政府系の金融公庫です。
いわゆる民間銀行等のプロパー融資と比較して、創業間もない企業や小規模事業者であっても融資を受けやすく、また金利も銀行よりも低いのが特徴です。
融資の概要について
利用条件
次の1~3のすべての要件に該当する方
- 創業の要件
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方 - 次のいずれかに該当すること
(1)雇用の創出を伴う事業を始めること
(2)産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める
(3)現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める
(4)民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める自己資金要件 - 新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる
「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」等に該当する場合は、本要件を満たすものとしまする
融資限度額
3,000万円(うち運転資金1,500万円)
担保について
原則、不要(法人の代表者については保証が不要となる場合あり)
制度融資の特徴
制度融資は各自治体が金融機関、信用保証協会と協力しながら行われる融資制度です。自治体によって制度内容が変わってきます。ここでは、東京都の制度融資についてご説明します。
制度融資を探す場合は、事業を行う所在地を管轄する自治体から探してみてください。
例えば、「豊島区 制度融資」とインターネットで検索してみましょう。
制度融資とは
利用条件
- 信用保証協会の保証を受けられる
- 次のいずれかに該当すること
(1)事業を営んでいない個人で創業をしようとすること
(2)創業した日から5年未満である中小企業者及び 組合(個人で創業し、同一事業を法人化した方で、個人で創業した日から 5 年未満の 方を含む。)
(3)分社化しようとする法人である

(行政書士)
制度融資の場合は、必ずしも自己資金を条件としていません。
ただし、自己資金があった方が有利になることは違いありません。
融資可能額について
3,500 万円(創業の前の方は自己資金に 2,000 万円を加えた額の範囲内)
担保について
法人代表者を除き連帯保証人は不要
※信用保証協会の保証を受ける必要あり(都が信用保証料を一部負担あり)

(行政書士)
制度融資のポイントとしては信用保証協会の保証を受ける必要があることがあります。
そのため、審査も金融機関と信用保証協会の2本立てです。
日本政策金融公庫と制度融資の比較
2つの融資制度の比較
日本政策金融公庫の特徴
日本政策金融公庫の最大の特徴は、創業融資においては原則、連帯保証人が不要になります。制度融資の場合は、法人で融資を受けた場合にはその代表者やそれに準ずるものの連帯保証が必要になります。
これは、創業者にとってかなりのデメリットには違いありません。(信用保証協会を利用するという手段もあります)
制度融資の場合は、申し込みまでに自治体の斡旋を受けたりと時間がかかる場合がありますが、日本政策金融公庫の場合はここだけで完結します。お急ぎの場合は、こちらを選択されてもよいと思います。
日本政策金融公庫の創業融資の通過率は20%〜50%以下と大変厳しいものになります。入念な起業準備を行った上での申し込みでなければ、融資を受けられません。
制度融資の特徴
制度融資の場合は、自己資金の要件や過去の勤務経験の要件が日本政策金融公庫と比較して緩くなります。また、融資限度額や返済期間・据え置き期間も有利です。さらに、金利も条件を満たせば自治体が負担してくれる場合もあります。
創業融資の場合、そもそも「創業から○○年」の縛りや、自己資金の部分で要件を満たさずあきらめてしまわれる方も多いですが、制度融資はこの部分が比較的クリアしやすくなります。
利用しやすい一方で、申し込みまで時間がかかる場合があります。
創業融資の場合、起業準備のサポートや事業計画書の添削を受ける必要があり、そのために自治体運営のサポートセンターに何回か通わなければならない場合があります。
しかし、これは「面倒臭い」と思わせるデメリットでありますが、そもそも事業計画書が書けなければ融資は受けられないですし、事業は成功しないでしょう。もし、サポート自体は無料のことが多いので、積極的に活用されるのもひとつの手段です。
選ぶ場合は条件から比較

(行政書士)
どちらがよいかは、「あなた次第」な部分があります。
所属する自治体の制度融資と比較検討してみてください。
どの融資を選択すればよいか迷ったときには、以下の優先順位で検討されるのがよいです。
- 融資の条件の内容 ←借りられるかどうかが一番重要!
- 金利
- 融資の限度額
- 返済期間
一番は事業を潤沢な資金のもと用意周到に起業をすることです。希望の額の融資を受けられるように準備を進めていきましょう。
まとめ
以上、政策金融公庫の融資と制度融資の比較をしました。
2つの融資の制度にはそれぞれメリット・デメリットがあります。まずは「借りられるかどうか」を最優先に比較検討をされるのがよいでしょう。
また、2つに共通して言えるのが、入念な起業準備無くして資金調達はあり得ません。金融機関も「この人なら返してもらえる!」という確信がなければ融資を行いません。しかし逆をいえば、それが成功の道につながっていくと思います。
(行政書士)
実際のところ、自己資金は1/3程度はあった方が借りやすいのが現状です。