日本政策金融公庫の「創業計画書」はA3用紙に1枚とかなりシンプルです。書くスペースが少ないからといって審査が簡単というわけではありません。日本政策金融公庫の創業融資は、審査の通過率は2~5割程度と言われています。この少ないスペースにうまくまとめなければ、この狭き門を通過することはできません。
本編では、「創業計画書」に書くべき内容を解説していきたく思います。
創業計画書に書く内容に迷った場合は、↓の記事も参考にしてみてください。
もくじ
「1創業の動機」の書き方

ここは4行とかなり狭いですが、しっかりあなたの経歴や強みをアピールする部分になります。
- 今までのどのような経験がもとに今回の計画にたどり着いたのか
- 既存にあるビジネスとは違う独自の強みは何なのか
- どのような経緯を持って起業の準備に取り組んだのか
上記を踏まえながら、ビジネスプランの概略を説明していきましょう。そうすることで、融資の担当者は書類の初めに概略を知ることができ、その後の項目も理解されやすくなります。
「2経営者の略歴等」の書き方

ここでは、過去の経験、スキル、ノウハウを記入します。企業でお勤めされていた方であれば、どのような会社でどのような仕事をしていたかを具体的に書きます。収入も合わせて書きましょう。
もしたとえ、起業するビジネスに直結するような経験がなかったとしても、必ず通ずる部分を書いてアピールをします。例えば、飲食店のフロアマネージャーをしていて、起業してネイルサロンを経営する場合、「マネージャー」として働く部分には共通点があります。こういった共通する内容を書くようにしましょう。
事業に関係のある資格や特許なども必ず書きます。特に資格については、「その事業を行ううえで当たり前すぎて」書き忘れることがよくあるので注意してください。
ここでは、あなたのビジネスが成功する「根拠」をアピールする場になります。起業したての場合は今までの事業実績がありません。融資担当者は今までの経験から判断することになります。
また、「1創業の動機」と「2経営者の略歴等」では、『経営者としての素質』が見られます。起業したての時は、誰でも経営の初心者ではありますが、素養を確認されることになります。
「3取扱商品・サービス」の書き方

ここでは、商品やサービスを提供する事業内容が魅力的かつ具体的にイメージできるように記載していきます。「具体的」にというのは、「誰に」「どのように」「いくらで」売るかが分かるように記載します。
「魅力的」というのは、その商品のアピールポイントを書きます。アピールポイントは、例えば他社との差別化ポイントや、その商品の魅力を増している要因(例えば、独自の仕入れルートや顧客へのアプローチ方法、店舗のコンセプト等)を書きます。この際に、客観的・具体的に書くことで説得力を増します。
事業の魅力を客観的にとらえるための思考フレームに3C分析があります。
3C分析では、まずは顧客のニーズや購買要因について調べます。漠然とした顧客層ではなく、どのようなニーズや解決したい悩みがあって、それが購買行動につながっているのかを特定する必要があります。顧客を特定しなければ競合が見えてこないはずです。マーケット(ニーズや購買要因)の本質が何なのかをしっかり見極めましょう。
次に、そのマーケットの競合を分析します。目立っている競合は裏を返せば“成功している”企業です。競合の成功要因(=勝ちパターン=KFS)を見つけましょう。

出典:『経営戦略の基本』経営戦略研究所 p50(一部省略)
3C分析以外に、外部環境を分析するフレームワークとして「PEST分析」「5Force分析」、内部環境を分析するツールとして「SWOT分析」などがあります。もし、書く内容に悩んだ場合にはこれらのようなフレームワークを使用しながら整理してみましょう。
「4取引先・取引関係等」の書き方

ここは、開業前であっても見込み客や仕入れ先候補がすでにある場合は、積極的に「固有名詞」を書くとよいです。
見込み客の場合は、契約書や注文書などがあるとより説得性が増します。このような根拠を添付することで「早期に軌道に乗る見込み」があることをアピールすることができます。
また仕入れ先の場合は、好条件であることやその企業の信用状況にも留意しましょう。事業コンセプトに仕入れ先が影響する場合は選定根拠を別途説明したり、また複数者から選定したことを説明するとよいです。
外注先については、融資資金の使い途に外注費を記載している場合は、必ずこの部分についても記載します。外注先の存在は、経営基盤の一つになります。
「5従業員」の書き方

必要な人員の確保ができているか、また、過剰ではないかを確認してください。
当然、事業規模の割に外注先も十分ではなく、従業員も確保されていないようではどんな計画も「実現可能性は低い」と判断されかねません。
「6お借入れの状況等」の書き方

ここでは、下記等のローンを書きます。
- 住宅ローン
- 自動車のローン
- 教育ローン
- カードローン
- 50万円のリボ払い・分割払い
「7必要な資金と調達方法」の書き方

設備資金(「固定資産」「無形固定資産」へ投資するための資金)については、起業前・起業直後に購入するのが前提になります。半年先など、かなり先に購入する予定の設備は対象外になります。また、これらの設備投資が十分な売上・利益を生み出すという根拠が必要になってきます。これは、事業の見通しの部分及び別途添付する補足資料等と矛盾がないようにしてください。
また、特に重要になるのが「自己資金」です。自己資金は「コツコツ貯めてきた貯金」が主に想定されます。
自己資金になる例とならない例を挙げます。
- 不動産、自動車、ブランド品、貴金属等の自分の資産を売却して得たお金
- 所有していた株式を売却した場合
- 保険を解約した際の解約返戻金
- 既に使用した開業の準備のための支出
→レシートや領収書が残っている場合のみ
- タンス預金
- 親や親戚からの借入金
- (融資の審査の時だけ)一時的に友人から借りた見せ金

(行政書士)
「タンス預金」や「豚の貯金箱」に貯めていた「記録」に残らない預金は、自己資金とならないので注意してください。
「8事業の見通し(月平均)」の書き方

事業の見通しでの最も重要なポイントは「絵に描いた餅」ではダメです。必ず根拠が必要です。
「どのようにして、その売上高を実現するのか」を根拠とともに説明する必要があります。当然、計画上の様々な制約条件(機械設備の稼働能力、人材の能力、売り場面積等)を考慮し、実現可能な数字である必要があります。また、確実に達成できるような予測でなければなりません。参考として他の小規模な企業の経営指標と比較することで説得力を増す計画にすることができます。
また、融資の申し込みの際の収支予測の大事なポイントとして、下記が挙げられます。
- 売上はかために予測する
- 経費は多めに予測する
- 事業が早期に乗り、返済もできる計画が必要
(利益は最低限、借入金の返済元金以上の額である必要があります。)
銀行からの融資において、この「事業の見通し」「収支計画書」の部分は非常に重要です。
「絵に描いた餅」ではなく、「確実に達成できる」と融資担当者を説得できる計画書を作成してください。

(行政書士)
客観的に提示できる売上や利益の根拠を、ここで別途添付でしっかりと提示できると融資の可能性がグッと上がります!
フォーマットのダウンロードはこちらから
日本政策金融公庫の「創業計画書」は、こちらからダウンロードすることができます。
創業融資を借りるうえで必要な書式はこのページからダウンロードできます。

(行政書士)
フォーマットはA3の用紙1枚とかなりシンプルです。
書き足りない部分は別途添付もできますが、添付しすぎは「読む気」をそいでしまうので注意してください。
まとめ
以上、日本政策金融公庫の創業計画書の書き方について解説致しました。
初めにもお伝えしましたが、日本政策金融公庫の創業融資は非常にハードルの高い融資です。ポイントをしっかり押さえた計画書の作成が求められます。
書くスペースが狭いからと油断されることなく、しっかり計画を練ったうえで取り掛かるようにしましょう。
(行政書士)
ローンの内容が適切で、滞りなく返済が行われていれば、これらのローンが事業への融資に不利になることは、基本はありません。