創業融資の場合、過去の事業実績があるわけではありません。
だからと言って、「売上高」なんか予測できるわけないとはなから「適当」に数値を入れたのでは融資を受けることはできません。本編では、売上高をどのように算出していくかを解説していきます。
もくじ
「売上高」の予想はどのように立てるべき?
「なんとなく…」の数字では通用しません。
融資を受けるための事業計画書の「売上高」には必ず根拠が必要です。
どんなにすばらしいビジネスモデルでも、ただの「絵に描いた餅」では評価はされません。事業計画書に書かれた「売上実績」が具体的にどのような根拠があって、本当に達成されるものであるかどうかを積極的にアピールしていく必要があります。
根拠のある「売上高」にするためには、下記の要素を盛り込んでいく必要があります。
- 既に決まっている取引先との契約書や発注書等
→契約書や注文書等があると非常によいです。やりとりの記録等 - 徹底したマーケティング調査から導き出された予測
- 業種別の売上予測の計算方法からの算出
- 行政や公の機関が発表する指標
既に決まっている取引先との契約書や発注書等
アピールする材料は、なるべく確実な数字からアピールしていきます。
最も確実な証拠としては、既に受注が決まっていて取引契約が決まっている場合には、「契約書」や「発注書」を提示しましょう。
事業計画書内に取引予定の会社名や人名といった「固有名詞」を載せると強烈にアピールできます。出し惜しみせずに書いていくようにしましょう。
また、こうすることで「この人には人脈や営業力が十分に備わっている」という経営者としての素質を持ち合わせていることを印象付けることにもなります。
マーケティング調査からの数字
店舗ビジネスの場合は、立地の根拠や近隣店舗の競合調査をしっかりと行った上で根拠を算出するようにします。立地の根拠についても、必ず融資の面談で聞かれるところではあります。
特に競合の客の出入り数や客単価は、売上を算出する上でも参考になります。
業種別の売上予測の計算方法からの算出
売上の検証方法として、売上を構成する要素を因数分解していく方法があります。
算出方法については、日本政策金融公庫『創業の手引』で詳しく解説されています。
① 小売業・サービス業
<計算式> 1日あたりの顧客数 × 客単価 × 営業日数
<計算式> 1平米(または1坪)あたりの売上高 × 売場面積
② 飲食業、理・美容業などサービス業関係業種
<計算式> 客単価 × 席数 × 回転数 × 営業日数
③ 労働集約的な業種(自動車販売業、化粧品販売業、ビル清掃業など)
<計算式> 従業員1人当たりの売上高 × 従業員数
④ 製造業
<計算式> 製品単価 × 販売数量(または1社当たり購入量×販売先数)
⑤ 設備が直接売上に結びつき、設備単位あたりの生産能力が捉えやすい業種
<計算式> 設備の生産能力 × 設備数
行政や公の機関が発表する指標

(行政書士)
行政や公の機関が発表する指標を参考にしながら算出する方法もあります。
以下は、売上予測を立てる際に参考になるのが下記のデータです。
<日本政策金融公庫>
- 創業の手引き、創業のポイント集 https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/sougyou03.html
- 小企業の経営指標 https://www.jfc.go.jp/n/findings/sme_findings2.html
<J-NET21>
- 業種別スタートアップガイド https://j-net21.smrj.go.jp/startup/guide/index.html
<TKC全国会>
<中小企業庁>
<総務省統計局>
<厚生労働省>
<内閣府>
<経済産業省>
その売上高は実現可能?
事業計画書において算出する「売上高」は、つまり「売上目標」になる数値です。
必ず忘れずに行わなければならないのが、そもそもその「売上高」が実現かどうかの検証です。
誰しも、ビジネスを始める際には「よし!〇〇万円売り上げるぞ!」と意気込むものです。しかし、それが能力的に達成不可能であれば、「絵に描いた餅」でしかありません。
下記のように、売上高を構成する要素を分解して達成可能かどうかを検証してください。

上記の例ですと、生産能力的に目標売上高を達成できないことがわかります。生産個数を増やすためには、営業時間を増やしたり職人や設備を増強して生産能力を上げなければなりません。しかし、もし設備や人を増やせるほど店舗が広くなかったら、それも叶いませんね。

(行政書士)
融資の際の面談でも、必ず実現可能性については質問されますのでしっかり根拠を固めておきましょう
金融機関に提出する事業計画書の「売上高」のポイント
事業計画書は、相手の知りたい情報を盛り込む必要があります。
“相手”は多くの場合でビジネスマンです。つまり、その人は提出された事業計画書を何かしらの意思決定をします。融資の場合は、その意思決定=“融資の可否の判断”です。
融資担当者の人が融資の申し込み者にとってポジティブな決断を出すためにも、「相手の知りたい情報」にフォーカスしなければなりません。
- 売上は少なめ、経費は多めの事業計画書を作成する
→金融機関は「かたい」数字を好む - 事業が早期に軌道に乗り、返済は滞りなくできるという計画をたてる
→金融機関が一番気にしているのは「返済してくれるのか」ということ
金融機関は、「返済能力」を特に気にしています。
特に、創業融資の場合は実績がないことが多く判断材料が少ないのも事実です。しかし、逆を言えば事業計画書で融資担当の方の気持ちを掴めれば難しくないと言えます。

(行政書士)
ポイントは2つ!
「予測はかために」「早期に返済できるように組み立てる」ということです。
まとめ
以上、創業融資で提出する「事業計画書」の売上高の書き方についてご説明しました。
金融機関の場合は、「確実な数字」が好まれます。売上は「かため」に読んで、ただしなるべく早期に返済が可能な状態にするように計画を立てることがポイントです。
取引先との契約書や発注書等の確実な実績があれば積極的にアピールするべきですが、もしない場合には公の機関が発表している指標を使用しながら根拠のある売上予測を立てるようにします。
(行政書士)
融資の申し込みで提出する事業計画書の「売上高」の記入にはポイントがあります。